美食の国として知られるフランスのレストランで働く料理人がハラスメントを受けたという証言が相次いでいる。フランスで注目を集めている1冊の本「厨房の暴力」ノラ・ ブアズニ著。レストラン業界のハラスメント問題を取り上げ、被害者と加害者の双方から集めた数々の証言が掲載されている。パリのミシュラン星付きのレストランで勤務する34歳女性は「腕や肩を平手打ちされた。誰も何も声をあげてはくれず帰り道で子どものように泣いた」。23歳女性は「働いているところでは調理しが従業員を冷蔵室に連れて行き殴っていた。同僚の1人がそのことを告発したらその同僚が遠ざけられた」。28歳女性は「調理方法をまちがえたら、シェフにへらで腕を焼かれた」。22歳の女性は「16歳のころ、先輩の男性から週に何度もセクハラを受けた。ほかの同僚からも全員の前で性的な言葉をかけられたこともあった。オーナーに相談したが君は若いんだからそういうことをされるのは普通のことだと言われただけだった」。フランスでは「厨房の暴力」が去年5月に出版されると同様の被害にあったという声が相次ぎ、国会でも業界の実態調査を求める動議が出されるなど波紋を広げている。フランスのレストラン業界の成り立ちも関係していると指摘されている。19世紀の厨房の旅団(ブリガード)。フランス料理の父とも呼ばれるシェフが自身の軍での経験を元に厨房の旅団と呼ばれる軍隊式のシステムを導入した。ジャーナリストで著者のノラ・ブアズニは苦しまなければ料理で上達できないという考え方もハラスメントを受けた側に沈黙を敷いてきたという。業界の改革を目指す若手料理人たち。パティシエのビットリア・ナルドンヌ。ハラスメントのない厨房を作ろうとフランス各地の料理学校で出前授業を行っている。原動力は駆け出し時代に受けたセクハラだった。「暴力が残っているのは自分たちが経験したことを次の世代に再現してしまう。若者に伝えることでいつか変化が実を結ぶ信じている」と話している。
