クメール王朝のかつての都アンコール・トムは一辺3キロの堀に囲まれた城塞都市。高さ8mの城壁の内側で約10万人が暮らしていた。都のほぼ中央に建つのがバイヨン寺院。それまでクメール王朝はヒンドゥー教を信仰する国だった。しかし12世紀末に即位した王は仏教に深く帰依し、この地に仏教寺院バイヨンを建てた。その最大の見どころはそびえ立つ石の塔に彫られた無数の顔。仏とも、ヒンドゥー教の神の顔とも言われるが真相は謎のまま。バイヨンでは今、修復作業が行われている。日本は約30年前からカンボジアと共同で遺跡の保全や調査を続けている。建物の土台の内側は固められただけの土や砂だった。バイヨン寺院には一般的に基礎と言われる硬い岩盤や杭がない。土は粘土質で砂には細かな石英が含まれている。木の棒で叩いて固めていく版築で固められた盛土の上に建てられている。内部の壁には当時の暮らしを伝える彫刻が数多く残されている。そこには版築の様子も刻まれている。版築により固められているとは言え、気がかりなのは雨。雨季が1年の半分を占めるカンボジアで何故バイヨンが倒れないのか長く謎とされてきた。最近分かってきたのは、強く降ってはすぐに止むスコールとの関係性。雨は床下1~2mまで染み込むが、それ以上深くは達しない。盛土は一時的に緩むが、水が乾くと石英同士が表面張力で引き合うことですぐに強度を取り戻す。
