三井精機は1990年代、円高で業績が悪化した。「量」から「質」へ、生き残りをかけて狙いを絞ったのがアメリカの航空機産業だった。航空機エンジンの部品用のマザーマシンに特化していった。NASAあが中心となって開発して打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を作る一大プロジェクトが始まったのは1996年。当時、川上社長はアメリカに出向中だった。宇宙望遠鏡は18枚の鏡を合わせて完成する。鏡の原料のベリリウムは固くて加工が難しい上、毒性が強いレアメタル。この鏡を作るマザーマシンを受注した。NASAからの条件は高精度な加工ができることと長期間の動作保証。しかも8台全て同じ精度で揃えてほしいというものだった。厳しい要求を乗り越えて、7か月で特注のマザーマシン8台を完成させた。