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オープニング映像。
三井精機工業の年商は241億円、従業員数は720人。北アメリカ、上海、タイに事業を展開している。加工から組立、測定まで本社工場で一貫生産している。三井精機のマザーマシンは1000分の1mmの精度で複雑な形のものを作る。そのため、マザーマシン自体を高い精度で作る必要がある。工場の基礎と地盤の間に1700本の杭が打ち込まれていて、機械に振動が伝わらない構造になっている。室温は24時間、20℃に保つ独自の空調システムもある。長さ1mの鉄は室温が1℃上がると1000分の12mm伸びる。温度を管理した環境の中で精度を繰り返し測定して調整を重ねることで、高い精度のものを生み出している。
三井精機のマザーマシンを導入しているTHKは国内屈指の機械部品メーカー。主要製品の一つ、精密ボールねじは高度な動きが求められる機械の重要な部品。ボールねじの加工に欠かせないのが三井精機の精密ねじ研削盤。1000分の1mmの精度でねじの溝を仕上げる。三井精機の精密ねじ研削盤は国内トップシェア。マザーマシンの最後の仕上げは人の手で「きさげ」を行っている。機械での加工では限界があり、平面には100分の2mmレベルの歪みができる。きさげを繰り返し行うことで1000分の1mm以下の平面に仕上げる。部品が滑って動くしゅう動面はきさげでカーブをつくって正確に真っ直ぐに移動するように調整する。
三井精機では企業の要望に応じてマザーマシンを1台ずつカスタマイズして作っている。多い時は10回に及ぶデザイン・レビューを経て組立の作業に入る。三井精機の創業は1928年。国産初の精密測定器を生産した。戦時中、日本で最初の工作機械メーカーの1社に指定されて、国産初のマザーマシンを開発した。戦後、自動化した高精度なマザーマシンを開発すると人気モデルを次々と生産。海外でも順調に売り上げを伸ばした。1990年代、価格競争が激化、さらに円高で業績が急激に悪化した。
三井精機は1990年代、円高で業績が悪化した。「量」から「質」へ、生き残りをかけて狙いを絞ったのがアメリカの航空機産業だった。航空機エンジンの部品用のマザーマシンに特化していった。NASAあが中心となって開発して打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を作る一大プロジェクトが始まったのは1996年。当時、川上社長はアメリカに出向中だった。宇宙望遠鏡は18枚の鏡を合わせて完成する。鏡の原料のベリリウムは固くて加工が難しい上、毒性が強いレアメタル。この鏡を作るマザーマシンを受注した。NASAからの条件は高精度な加工ができることと長期間の動作保証。しかも8台全て同じ精度で揃えてほしいというものだった。厳しい要求を乗り越えて、7か月で特注のマザーマシン8台を完成させた。
「世界の産業界に還元して貢献していく会社であり続けたい」と川上社長は語った。
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知られざるガリバーの次回予告。