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オープニング映像。
瀬戸内海の豊かな海を維持するため、新しい施設が香川県で動き始めた。丸亀市で出る1日約2万6000tの下水から汚れを取り除いて海に返している下水処理施設だ。その過程で重要な役割を担っているという下水汚泥処理用スクリュープレス。下水処理の過程で生じる水と汚れが混ざりあった泥状の液体、汚泥を脱水して汚れのみを取り出す。固体と液体が混ざった物質をそれぞれに分ける技術を「固液分離」と言う。脱水汚泥は焼却・再利用可能。重量が軽くなるので搬送コストも下がる。今回のガリバーは固液分離技術による脱水機のリーディングカンパニー「石垣」。
石垣は国内に14カ所拠点を構え、海外市場にも事業を展開している。年商は213億円、従業員数は512人。下水処理に使うスクリュープレスは石垣が世界で初めて開発に成功したもの。凝集剤で汚れを集めて水と分離することで効率的な脱水ができるようになる。濃縮機で8割ほどの水分が抜ける。濃縮した汚泥を脱水部に運んで残った水分を絞り切る。
石垣の主力製品・スクリュープレスの心臓とも言える脱水部は穴の空いた筒型のフィルターが入っている。ポイントは内部のスクリュー軸が出口に向けて徐々に太くなっている所。この構造によって汚泥が搬送される過程で通り道が徐々に狭くなることで強い圧力で水分が絞られていく。出てきた脱水汚泥は元の状態から9割以上の水分が抜けて、重さも10分の1以下に。下水処理場では下水を24時間処理しなければならない。フィルターを定期的に自動洗浄することで長時間の連続運転ができるようになっている。維持・管理が用意でエネルギー効率の良い下水汚泥処理用スクリュープレスは近年徐々にシェアを拡大している。
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スクリュープレスの部品の数は400以上。1台組み上げるのに4週間ほどかかるという。スクリュー軸の加工ではまず機械で大まかに形を整えた後、羽の先を人の手で丁寧に仕上げていく。フィルターの取付作業も人の目で確認しながら取り付けていく。下水はその土地の人口や産業などによって質が変わるという。水質に合わせた製品をその都度作るため、製造を自動化せず人が一つ一つ確認しながら丁寧に仕上げている。耐久性、密閉性、運動性を兼ね備えた軸受けは独自構造のオリジナル品。
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石垣は1958年、塩作りが盛んだった香川県坂出市で創業した。当初は製塩工場のポンプ整備うあ配管工事を請け負っていたが、製塩工程で出るにがりに残った塩分を取り出したいという依頼から脱水機を開発した。
脱水機を開発して機械メーカーとして歩みだした石垣。1960年代の日本は高度経済成長期にあって飛躍的に経済規模が拡大する一方で、公害問題が深刻化していた。固液分離の技術が向上などの排水処理に活用されて、石垣の事業は拡大していった。70年代には海外進出も果たした。その頃、オイルショックで世の中は不景気に。民間企業の設備投資が減少したため、石垣は水インフラ関連に重心を移して新たな脱水機を投入。しかし、下水汚泥は効果的な脱水が難しく市場競争に出遅れた。さらに、不況の煽りを受けて経営が悪化。下水汚泥処理用スクリュープレスの開発が打開の一歩だった。圧力を制御する独自の手法で新製品を開発して経営状況も回復。現在もこの機種のトップシェアを維持している。近年、一部の下水汚泥処理では微生物が脱水に必要な繊維も分解してしまうという課題を抱えている。繊維がない汚泥は脱水効率が低下する。石垣の開発した新技術・プラチナシステムは繊維の少ない汚泥の脱水効率を向上させる。微生物で分解する前の汚泥から繊維分を採取し、微生物が分解した汚泥に繊維分を戻して脱水する。
「海外に向けて発展していきたい、環境の負荷を下げるという大きい目標もある」と石垣社長は語った。
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知られざるガリバーの次回予告。