FRB(連邦準備制度理事会)に対して繰り返し利下げを求めて圧力を強めてきたトランプ大統領。パウエル議長を“遅すぎる男”と呼ぶなど激しく批判してきたが、今回攻撃の矛先が向けられたのはクック理事。トランプ大統領は25日、SNSに書簡を公開し、クック理事を解任すると明らかにした。住宅ローンをめぐる不正があったとして解任の理由にあたると主張。FRB理事の任期は14年。大統領は「正当な理由」がある場合にのみ解任できるとされている。「正当な理由」は法律で定義されていないが、一般に職務怠慢、職務放棄、職務上の不正行為と解釈されている。欧米メディアは過去に大統領が理事の解任を試みたケースはなく、トランプ大統領の主張が「正当な理由」に該当するか不明と伝えている。一方、クック理事は声明で「法に基づく理由は何も存在せず、トランプ大統領にその権限はない。私は職務を遂行し続ける」と反発している。クック理事の担当弁護士は解任の通知は法的な根拠を欠いているなどとして提訴する意向を明らかにした。仮に法廷闘争となった場合、最高裁まで争うことになるとみられている。人事が重要な背景にはFRBの理事の構成がある。7人の理事のうちトランプ大統領が指名した2人は先月開かれた金融政策を決める会合で利下げを支持して金利の据え置きに反対していた。クグラー理事は今月、任期途中で辞任。トランプ大統領は自身に近い経済諮問委員会・スティーブン・ミラン委員長を後任に指名し、議会上院の承認待ち。仮にクック理事が解任され、後任がトランプ大統領の意向に沿う人物になれば過半数が大統領寄りになり、一段と影響力を強めることになりかねない事態となっている。
時の権力者が中央銀行に影響力を行使しようとすることは繰り返されてきた歴史だと言えるが、それが良い結果をもたらさないことは過去の事例が示しているとも言える。1970年代にはニクソン元大統領が選挙前に景気を浮揚させるため、バーンズ元議長に低金利を維持するよう圧力をかけ、その後の急激なインフレと低成長を招いたと批判された。近年はトルコでエルドアン大統領が中央銀行に介入するかたちで繰り返し政策金利の引き下げを進めた結果、2022年には一時85%を超えるインフレを記録。トルコ国内の物価が大きく上昇する事態となった。政治から独立した判断で物価や経済の安定に専念することが求められる中央銀行。その独立性の大切さを訴えたのがFRB元議長・バーナンキ氏とイエレン氏。先月、共同でニューヨーク・タイムズに寄稿した中で2人は「アメリカとほかの国の経験から得られた圧倒的な証拠は金融政策の決定から政治を排除することがよりよい効果をもたらすことを示している。歴史からの明確な教訓は中央銀行が政府の財政赤字への対応を強制されると必ずインフレ率の上昇と経済的損害が生じる」などと指摘している。
時の権力者が中央銀行に影響力を行使しようとすることは繰り返されてきた歴史だと言えるが、それが良い結果をもたらさないことは過去の事例が示しているとも言える。1970年代にはニクソン元大統領が選挙前に景気を浮揚させるため、バーンズ元議長に低金利を維持するよう圧力をかけ、その後の急激なインフレと低成長を招いたと批判された。近年はトルコでエルドアン大統領が中央銀行に介入するかたちで繰り返し政策金利の引き下げを進めた結果、2022年には一時85%を超えるインフレを記録。トルコ国内の物価が大きく上昇する事態となった。政治から独立した判断で物価や経済の安定に専念することが求められる中央銀行。その独立性の大切さを訴えたのがFRB元議長・バーナンキ氏とイエレン氏。先月、共同でニューヨーク・タイムズに寄稿した中で2人は「アメリカとほかの国の経験から得られた圧倒的な証拠は金融政策の決定から政治を排除することがよりよい効果をもたらすことを示している。歴史からの明確な教訓は中央銀行が政府の財政赤字への対応を強制されると必ずインフレ率の上昇と経済的損害が生じる」などと指摘している。
