海峡を結ぶ鉄道は地元、マルマラ海にちなんでマルマライと名付けられた。しかし工事はいきなりつまずいた。ローマ帝国時代から栄えるイスタンブールの地中からは、貴重な遺跡が出土する。その度に調査が行われ、工事が止まった。海底トンネル担当の小山たちは緊張していた。潮が予測不能なうえ、荒れ方が凄まじかった。この不気味さに直面することになったのはシミュレーションが専門の伊藤一教と織田幸伸だった。2人に課されたのは潮流を正確に予測するプログラムを作ることだった。しかし実際の海峡は謎に満ちていた。一方、沈埋函の製造現場では100年耐えられるようにと性能を追求する日本に対し、そんな長時間は働けないと不満が上がりトルコ人技術者は次々にやめていった。お茶休憩の長さまで諍いの種になった。まとめ役のトルガ・プラックは仲間を引き止めていたがトラブル工事に、本当にできるのかと疑うようになっていた。着工から1年、工事は計画から半年遅れていた。工事が遅れれば総工費が跳ね上がっていく。発注元のトルコ政府からも「この工事はあと100年くらいですか」と遅れを遅れを指摘された。人一倍責任を感じていたのは現場リーダーの木村だった。地盤改良は硬い岩盤に阻まれ予定の100分の1しか進まなかった。ある日、木村を交代させろという本社のウワサを聞いた。小山は木村に知らせず交代の話を断っていた。