新華社通信が「中国政府が世界最大規模の水力発電ダム建設計画を承認した」と報じた。建設場所はヒマラヤ山脈を源流とするヤルツァンポ川(チベット自治区→インド→バングラデシュ→ベンガル湾)。長さ50km間に2000mの高低差があり発電能力が高い。中国専門家の試算では「3億人以上の年間電力需要を満たす」。世界最大級の「三峡ダム」(湖北省)の3倍以上の発電容量になるとも言われている。経済産業研究所・藤和彦によると「ダム下流に位置するインドとの対立激化の懸念がある」。このダムの下流域周辺では約1億人が生活しており貴重な水源(飲料水、農業)となっている。インドでは「ダム建設で深刻な影響が及ぶ」と警戒感が広がっている。2019年、タイ・メコン川で100年ぶりの低水位となり農業や漁業に打撃が出た。きっかけは上流にある中国のダムが放水量を制限したこと。インド・PTI通信は敵対行為の際に大量の水を放出し洪水を引き起こせるとして「安全保障上の問題」を指摘している。中国はダム建設について、再生可能エネルギーの利用促進で脱炭素につながるとアピールし、中国報道官は「下流域の国に悪影響は及ぼさない」としている。しかし、中国とインドには長年国境問題があり互いに領有権を主張する地域が多く、大部分で国境が確定していない(BBCより)。2020年には軍事衝突も起き、中国軍は4人、インド軍は20人が死亡している。去年10月、モディ首相と習近平国家主席が5年ぶりに正式会談し関係が改善してきた。