日本経済新聞とTXM系列5局が共同制作し、躍動する地域経済のニュースを伝える「ローカルビジネスサテライト」。群馬県の町のパン屋さんが、年間売上高36億円の企業へと成長した理由とは。東京・恵比寿にあるダイニングレストラン「ブルーノート・プレイス」。こちらではある製品の活用が進んでいる。凍ったパンをオーブンで10分温めるだけで出来上がる、焼きたてパン。サラダに付くパンやサンドイッチ用のパンもすべて冷凍パンを活用。ブルーノート・ジャパン・エグゼクティブシェフの長澤宜久取締役は「手作りはやりたいが時間と手間がかかる。冷凍パンはすごく品質も良く『これは自家製パンなの?』と言われるぐらい」などと述べた。このパンは、一度焼き上げたものを急速冷凍した「焼成冷凍パン」。短時間で焼き上がることから人手不足の解消にもなる。冷凍パンの市場規模は約1800億円で、焼成冷凍パンがうち2割を占めている。(出典:株式会社矢野経済研究所「冷凍パン生地・冷凍パン市場に関する調査(2023年)」・2023年10月27日発表)。プロが認める焼成冷凍パンのパオイオニアが群馬・桐生市に。焼成冷凍パンメーカー「スタイルブレッド」では毎日約40万個のパンを製造し、全国4000社に販売。従業員数は400人。売上高はこの10年で3.5倍に。今では年間36億円を売り上げる。材料の小麦粉は主に群馬県産。日本経済新聞社前橋支店の岡田信行支局長は「群馬県は国内有数の小麦の産地。小麦を使った麺やパン、まんじゅうなどの生産が盛ん。昔から好んで食べる文化もあったことが背景にある」などと述べた。実は、群馬県から「日清製粉」、「築地銀だこ」など小麦を使った全国ブランドが多く誕生。スタイルブレッドも、地元の小麦を使って自社で培養でする「桐生酵母」という天然酵母がこだわり。アルチザンファクトリーチームの塚越祐葵工場長は「独特の風味や味を出すために『桐生酵母』を使っている」などとコメント。酵母も地元産で、低温で16~18時間発酵させる。焼き上がったパンは特殊な冷凍庫に入れ、-45℃で急速冷凍。冷やす時間は企業秘密。もとは1930年に桐生市で「桐生製パン所」として創立し、4代目の田中知さんが事業転換を図った。きっかけは26年前、30歳の時にアメリカで見た最先端の冷凍技術。2006年に焼成冷凍パンに特化した事業を始め、2018年には個人向けの販売も開始。シンガポールへの販路も獲得。 20億円を投じた新工場をことし立ち上げ、事業拡大を目指す。