一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんはクレジットカードで電車に乗れるようになることについて「日本を訪れた外国人観光客にとって、クレジットカードですぐに公共交通を利用できることは歓迎されるはず。クレカタッチによる乗車は、世界的に普及拡大のトレンドにあります。例えば、ニューヨークやサンフランシスコ、そしてロンドンでは、一般的な乗車手段としてすでに浸透している。」と解説。ただ、すでに交通系ICカードがある中で、さらにクレジットカードの利用を進める背景は何なのだろうか。背景には、交通の利便性向上だけでなく、ビジネスにおけるデータ活用という視点がある。データは「21世紀の石油」とも言われており、データを優位に活用する企業が、21世紀の産業構造を左右すると考えられている。クレジットカードは、日常の消費行動と結びついており、これを乗車データと組み合わせることで、移動と買い物を含めた生活動線全体を捉えるデータ分析が可能になる。例えば、クレジットカードの利用を通じて、「誰が、どこで、何を買ったのか」というデータを取得できる。クレジットカードで電車に乗れるようになれば、「いつ、どこに出かけたのか」という移動情報も把握できる。こうしたデータを活用することで、キャンペーンやイベントの効果を最大化できるほか、不動産デベロッパーとしての側面も持つ鉄道会社にとっては、商業施設の運営や次世代の街づくりを進める上での競争優位性につながる。一方で、クレカタッチは、交通ICカードのように、その場で残高が確認できる仕組みではないため、運賃が見えにくくなるという課題がある。また、学割や定期券などとの相性も指摘されている。利用者は、交通ICカードなどと利便性を比較しながら、賢く使い分けていく必要がありそうだ。利便性の向上に加え、どこまで定着していくのか。利用者の1人として、今後の広がりを注視していきたい。
