天才と呼ばれた男「佐藤久勝」はヴォーリズよりも9歳年下の建築事務所の所員。滋賀県大津市に生まれ、22歳で入社し、ヴォーリズの元で一から建築を学んだ。その後、独学で古今東西の建築様式を研究。39歳のときに建築視察する、世界旅行を観光し研鑽を深めた。やがて、ヴォーリズから建築家として認められ、東華菜館や心斎橋の大丸といった、時代を代表する華やかな建物を次々と手掛けるようになった。佐藤が手がけた心斎橋の大丸は、アールデコを基調としながらも、それだけでは説明つかない様々な建築様式と取り入れた魅力があるという。そんな佐藤のもとによせられたのは大丸・下村社長宅の設計依頼だった。その手書きの図面からは、佐藤の執拗なまでのこだわりが見て取れる。壁面のタイルには切れ込みを入れたかったことがわかる。この手書きの線のゆらぎを現場の職人に伝えるために図面が多く、大丸ヴィラは重厚感の中にも愛らしさがある。完成を喜んだ年に、下村は新聞の取材に、佐藤久勝を天才と綴っていたが佐藤は大丸ヴィラの完成前に病死。ヴォーリズもその死を最も嘆かわしい損失と答えていた。佐藤には生前何度も引き抜きの話もあったというが、断固としてそれに応じずヴォーリズのもとにとどまり続けた。
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