残り半年を迎えても、筒井たちの工事は2か月遅れだった。作業員の疲れもピークに達していた時、1人の女性が缶コーヒーを差し入れてくれた。早野さち子は島越に住んでいて、寝込むようになった夫を看病していた。知り合いの家はすべて流され、誰もいなくなった集落で、高台に住む早野の家だけが残っていた。早野さち子は最初、工事の騒音と振動が苦しかった。しかし毎日、働いている姿を見て気持ちが変わっていた。夫の鶴喜は工事の記録をカメラに収めていくことにした。写真を見せてもらった筒井は、粘り強く遅れを巻き返した。震災から3年目、3月17日、全ての線路が繋がった。1番列車に乗り込んだ金野、沿線のあちこちでは、おかえり三鉄と大漁旗がふられていた。