防衛力の南西シフトが進む中、武力攻撃が予測される事態に備え沖縄・石垣島では住民の避難計画の策定が進められている。沖縄戦の教訓から国民保護に基づく住民避難を考える。沖縄・那覇市で行われた「対馬丸」事件の犠牲者を悼む慰霊祭。1994年8月、疎開船「対馬丸」は米軍に撃沈された。1400人あまりの犠牲者のほとんどが、戦闘の足手まといになるとして集団疎開させられた子どもや高齢者たちだった。「対馬丸」は旧日本軍が兵員輸送に使っていた船で、疎開する際には軍艦2隻が護衛につくなど軍人と民間人を分ける軍民分離が徹底されていなかった。近年、防衛力強化のもと沖縄県内の各地で部隊配備を進める自衛隊。おととし閣議決定された安保関連3文書の1つ「国家防衛戦略」には「国民保護の任務を実施していく」などと書かれている。国際人道法上、軍民分離の原則がある中、「自衛隊の住民避難への関与についていまだ議論が深まっていない」と日本大学危機管理部・中林啓修准教授は指摘し、「少し危なっかしくは感じている」と述べた。政府は今年4月、沖縄・石垣港を特定利用港湾に指定した。有事に備え、平時から自衛隊や海上保安庁が施設を円滑に利用できるようになる。住民の島外避難の拠点となる石垣港。沖縄・石垣市は住民約5万人を6日間で福岡県などへ避難させる計画を策定。石垣市・中山義隆市長は「民間の航空機、船舶を利用しての避難。部隊展開が始まるところで避難し始めることはない」と述べた。日本大学危機管理学部・中林啓修准教授は「軍事優先のなかで住民避難を考えるのではない。外交政策で事態を未然に防止する、大きな見取り図の中で(住民避難を)議論するのが大事」と述べた。万が一の備えとして議論の重要性が高まっている国民保護。沖縄戦の教訓は徹底されるのか、注視しなくてはならない。