「ちゃん系ラーメン」成功の秘密は何なのかという取材交渉は先入観なく味を楽しんでほしいという理由から難航が続いた。だがただ1つ、ヒントとして取材を許されたのがちゃん系ラーメンの店長やスタッフが月に1回行う「勉強会」への同行だった。この日の目的地は群馬だった。それは昔から老舗をメインに地方に根付いているラーメンを食べ歩く「食べ歩き会」であった。指南役はライブの傍ら各地のラーメン店を食べ歩き、この世界では知る人ぞ知る存在となったロックバンド「サニーデイ・サービス」の田中貴氏である。この日の1軒目は戦後の闇市から始まったという老舗である「見晴亭藤岡店」。2軒目へ行き最後は栃木まで足を伸ばすと創業1983年の「大童ラーメン 城内店」へ。彼らはこれまで回った1000軒以上の老舗ラーメン店から長年客から愛され続ける黄金の方程式を探していた。そしてちゃん系ラーメン開発に関わったX氏が顔も名前も出さないことを条件で開発の裏舞台を話してくれることとなった。ちゃん系ラーメン立ち上げのキッカケは初めての緊急事態宣言が出され、町から人が消えた頃のことだという。先生役だった田中氏が当時彼らが参考にしたいくつかの老舗を教えてくれるということとなり、その1つが創業1946年の浅草橋大勝軒。今人気の行列店は材料をとことん吟味し、これまでにない食材や技法を駆使したものがほとんどである。だが浅草橋大勝軒のラーメンは決して特別な食材は使わず、終戦直後から変わらぬ素朴なラーメンだけで79年の荒波を生き抜いてきた。こうした店のエッセンスを凝縮し、おいしい共通点の1つはスープにあった。
住所: 大阪府大阪市東成区深江南3-20-14
