共同声明案では、10項目のうち3つの項目に絞られた。ロシア軍の撤退が盛り込まれなかったのは、3カ国の中にはロシアとの関係も重視する国もあるため、原発の安全確保や食料・安全保障など全ての国が賛成できそうな内容にすることで共同声明をまとめたいという狙いがあるとみられる。欧米やウクライナからすれば、国際社会がウクライナ支持で結束していることを示し、軍事侵攻を続けるロシアへの圧力にしたいという思いがある。しかし去年6月以降断続的に行われてきた各国の安全保障担当の高官レベルによる協議では、各国が一致した共同声明を採択できず、議長声明や報道向けの発表にとどまってきた。ロシアとの関係も重視するグローバルサウスなども巻き込み、ウクライナ支持の世界的な流れを作ろうとすればするほど意見がまとまらなくなるというジレンマに陥っている。平和サミットでは、バイデン大統領が参加を見送り、中国は欠席するとしている。中国は自国の提案にこだわっているが、ウクライナは肯定的には受け止めていないとみられる。今回の会議の日程をイタリアでのG7サミット直後にしたのは、選挙活動で多忙を極めるバイデン大統領が出席しやすくするためでもあった。中国についても、ロシアに対して影響力を行使できる国だとして、ウクライナは当初から参加を呼びかけてきた。しかし中国が出席したのは政府高官レベルの協議のうち、サウジアラビアで開かれた2回目の協議だけ。ゼレンスキー大統領が、今月中国が各国に対して今回の会議に参加しないよう働きかけていると批判したのは、中国への苛立ちが現れた結果。次の会議ではロシアを招きたい意向だとされている。