今、世界中で注目されているちょっとお高い「A2牛乳」。普通の牛乳はβカゼインの遺伝子タイプがA1タイプやA1とA2なのに対して、このA2牛乳の乳牛はA2タイプだけ。タンパク質やビタミン、ミネラルが多く、栄養学的な利点もあるといわれている。さらに、乳糖不耐症の症状が緩和され、おなかがゴロゴロしにくいという。世界市場は2030年までにおよそ3倍まで成長すると予想されている。A2牛乳をつくっているのが化学メーカーのカネカ。高齢化や後継者不足、飼料の高騰による経営の悪化などで年々酪農家が減少、歯止めが効かない状態になっている。別海ウェルネスファームは東京ドーム約20個分の敷地で乳牛128頭を飼育。この牧場は4人の酪農家と2人の研究管理スタッフのわずか6人で運営している。スタッフの久多里俊輔さんはもともとカネカの食品素材の研究開発者。ベルギー駐在時に契約牧場を視察したことから、この有機牧場の新設に参加した。ヨーロッパの牧場技術、別海町の牧場の伝統的な知恵、カネカのエンジニアリングの力の3つが合わさり新しい牧場の形が生まれたという。経産牛舎では牛にストレスを与えない環境づくりのために、牛たちはつながれず常に自由に歩き回れるフリーストール飼育をしている。さらに、放牧飼育をすることで牛たちはマイペースに過ごすことができる。牛の出産も人の介助はなく自然分娩で行われる。この牧場が取り入れたのは自動搾乳機。牛の首に取り付けたICチップを使いモニタリングシステムで個体を管理し、健康状態はもちろん過剰な搾乳も防止できるという。生乳は現在、年間600トン出荷され乳製品工場に運ばれ殺菌処理される。そして、A2牛乳として私たちのもとに届く。