イームズのシェルチェアには日本にも大きな影響を与えていた。駅のホームに置かれている待合のベンチはシェルチェアと似ている部分がある。剣持勇は戦後の日本を代表するプロダクトデザイナーでラタンチェアや柏戸イスなど数々の名作を生み出してきた。シェルチェアをみた剣持は彫刻作品のようだどと興味をひかれていた。剣持は日本で唯一FRP製品の大量生産が可能だった家具メーカーの寿商店と手を組んでイスの開発を行った。1964年に東海道新幹線が開通した際に剣持がデザインしたシェル型のイスは最先端の椅子として駅のベンチに採用された。1970年の日本万国博覧会でも至る所にシェル型のイスが。やがて日本中にFRP製の椅子が作られるようになり身近な存在に。シェルチェアで成功を収めたイームズ夫妻は映像制作や展覧会の企画など様々な表現に挑んでいった。二人が建てたモデルハウスはイームズハウスと呼ばれ、夫婦の住まいになった。モダンアートのような外観で、家具や置物にこだわり快適な空間をつくりあげた。しかし美しいだけでなく、柱もガラスも当時一般に流通していた工業用の部材のみを使っている。目指したのは誰でも簡単に建てることのできる家。当たり前のように実現できると証明したかったという。イームズ夫妻の願いは70年経過した今でもシェルチェアを通して世界中に広まっている。