優茉ちゃん(取材当時1)はシンフォリウムが承認された後、初めての手術を受け、心臓にあいていた2つの穴を塞いだ。従来のパッチと異なり、交換回数を減らすことが期待されている。シンフォリウムの開発は成功したが、根本のゴールはまだ先にある。次なる挑戦は心臓の人工弁の開発。医師のアイデアを大企業がバックアップして形にするのはアメリカでは日常的な光景だという。根本医師に協力する帝人は医療機器では国内10位前後でトップメーカーではなく、時間も金もかかる上、リスクが高い子ども用医療機器の開発を続けることは容易ではない。シンフォリウムは承認まで9年かかった。国内で承認医療機器529例のうち小児用はわずか12例(2.2%)。PMDA(医薬品医療機器総合機構)は医療機器の安全性を評価する公的機関。根本の挑戦がモデルとなった小説「下町ロケット」にも登場し、開発を阻む壁として描かれる。ハイリスクな子ども用の医療機器は開発が少ないという。PMDAの石井さんは根本医師のような人たちがもっと多く出てほしいと語った。6月に人工弁の動物実験が始まり、帝人の技術者にも立ち会ってもらった。根本に会いたいと手紙をくれた小学6年生が訪ねてきた。探究学習で知ったシンフォリウムを大阪・関西万博で発表するため、分からないことを根本に聞きに来た。根本の挑戦は未来の世代にも届いていた。アメリカ・スタンフォード大学の池野文昭医師はアメリカで200以上の企業と医療機器の開発に関わってきた。日本はアメリカと異なり、成功したロールモデルがないのでマインドセットがない。若い人が憧れる存在が大事だと語り、根本への期待を語った。