解体修理が始まって1年。薬師寺には連日、病気平癒や家族の健康を祈り写経をする人々が訪れていた。解体修理が始まって1年。薬師寺には連日病気平癒や家族の健康を祈り写経をする人々が訪れていた。石井は途方もない作業に取りかかっていた。解体した1万3000もの部材一つ一つに向き合う。そして腐りを取り除きそこに新たな木材をピタリとはめ込んで部材をよみがえらせていった。石井は工人の心の謎を解く手がかりを探したが一向に見つからなかった。仕事のない日、石井の楽しみは妻・幸代と出かけることだった。石井が屋根を支える部材を手にするとその切り口を見てハッとした。自分なら誰に見られても恥ずかしくないよう少しずつ削る部分。しかし古代の工人は心に迷いなく一振りで切り落としていた。
一方、信仰の要である心柱。修理のスペシャリスト松本は苦しんでいた。柱の修理は通常ある程度まで切り落とし根継ぎをして補強する。しかし松本にはどうしても心柱を切りたくない理由があった。奈良・吉野の山あいに生まれ15歳で大工の世界に入った松本。初めて修理したのは創建以来400年、地元の人々に親しまれてきた神社。松本が神社の門を修理すると図面より3ミリ高くなってしまった。高くなった部分を削って調整しようとした瞬間、「当初材は大事にしろ」と先輩のどなり声が飛んできた。それから30年。松本は祈りが込められた古い部材を生かす技を極めてきた。心柱修理の工法を考えること半年、松本は一つの答えにたどりついた。1300年前の心柱の長さを切らずに残す前代未聞の工法だったが専門家からは懸念の声が上がった。必ずやり遂げると断言した松本。大きな重圧がのしかかった。
一方、信仰の要である心柱。修理のスペシャリスト松本は苦しんでいた。柱の修理は通常ある程度まで切り落とし根継ぎをして補強する。しかし松本にはどうしても心柱を切りたくない理由があった。奈良・吉野の山あいに生まれ15歳で大工の世界に入った松本。初めて修理したのは創建以来400年、地元の人々に親しまれてきた神社。松本が神社の門を修理すると図面より3ミリ高くなってしまった。高くなった部分を削って調整しようとした瞬間、「当初材は大事にしろ」と先輩のどなり声が飛んできた。それから30年。松本は祈りが込められた古い部材を生かす技を極めてきた。心柱修理の工法を考えること半年、松本は一つの答えにたどりついた。1300年前の心柱の長さを切らずに残す前代未聞の工法だったが専門家からは懸念の声が上がった。必ずやり遂げると断言した松本。大きな重圧がのしかかった。