一直線の道が続く工事中の幹線道路。その建設を阻むように沢山の墓が立ち並んでいた。その数は約200基。墓の立ち退きが進まないため、道路が開通できないという。墓のすぐ手前まで建設が終わっているのに開通できない道路。なぜこんな事になったのか。日本テレビの情報提供サイトに疑問の声で「立ち退きが進まないため開通しない道路がある」との情報が寄せられた。これに応えるべく川崎正明記者が調査した。今回向かったのは練馬区で、上空映像では道路整備は修了しているが車は通行できない場所が続き、更に先には墓が道路を塞いでいるのが確認できる。墓の先も道路整備はほぼ終わっていて、約1.7km一直線の道が伸びていた。この道路は東京都が整備する都市計画道路・放射第7号線で将来は東京都心から埼玉県狭山市まで繋がる予定の幹線道路である。問題となっているのは練馬区内の2kmに渡る工事区間で、整備が済んだ場所にはスーパー・ドラッグストアが開店している。しかし放射第7号線を通って店に行くことは出来ないため並行して走る道路は夕方になると渋滞になる。放射第7号線は2006年に国の認可を取得して用地買収へ。未開通の2kmの工事区間で約200軒の家が立ち退いたという。家を立ち退いた吉田さん夫婦を取材し家を手放してから17年。車は一向に走る気配がない。用地買収が終わり立ち退きが終わった場所から道路の建設は進んでいった。墓を管理している寺は、今から500年以上前に開かれたという日蓮宗善行院。地域に住む人の菩提寺として先祖代々の墓が立ち並ぶ由緒ある寺である。善行院・大庭一記住職は「東京都は寺の本堂と道路計画にかかっている墓の部分だけの移転を求めている。約200基の墓のうち道路計画にかかっていない約70基の墓は移転の対象にはならない。すべての墓と本堂を合わせて一つの寺で約70基の墓を残して移転できない」などとコメントしている。東京都は道路建設に関わる部分の代替地のみ補償。それでは寺が分断されてしまう。善行院・大庭一記住職は「私も檀家も同じで円満に速やかに寺と墓を新しい場所に移すこと。代替地も提示されたが敷地が狭くすべての墓が入りきらない」。寺側は立ち退きには同意しているものの、東京都の補償内容では寺と墓が分断されてしまう。これでは立ち退きに踏み切れないとして話し合いを続けているが今も平行線である。国立公文書館に道路計画の資料が保管されていた。国からの認可が降りたのは2006年。しかし道路計画自体は1962年に決まっていた。その理由は「城北方面の交通の円滑を図るため」と書かれているのみである。この資料では寺の敷地を横切る理由は不明であった。国土交通省に取材するも担当者は「当時のことを知る担当者がおらず明確な答えはわからない」などとコメントしている。東京都にも取材したが明確な回答は得られなかった。東京都は今後部分的な開通を検討するというが全面開通の目処は立っていない。果たして開通する日は来るのか。今後も取材を続けていくという。
住所: 東京都千代田区