残り半年、もう無理かもしれないと思ったときに、脳梗塞に倒れた父が囲碁を打っている写真が送られてきた。原は目印を見つけるためひたすら読み取りを続けた。そして3ヶ月が過ぎた時、出現率が圧倒的に少ない比率があった。それが1:1:3:1:1という比率だった。どこから読み取っても1:1:3:1:1の比率が現れるシンプルな正方形。それを目印にすることでまったく新しい2次元コードの原型ができあがった。あとは長屋に託された。汚れても読み取れる誤り訂正機能をコードに組み込む。長屋が目をつけたのはリード・ソロモン符号という高度な数学を用いた手法だった。長屋はそれを応用しジョードが最大30%汚れても正しく読み取れることを目指した。1ヶ月後、ついにプログラムを組み上げた。完成したコードにカメラをかざすと瞬時に読み取った。読み取り速度は圧巻の0.03秒。アメリカの2次元コードの10倍以上の速さだった。その速さからQuickResponseの頭文字を取ってQRコードと名付けられた。工場に導入されると作業工程が飛躍的に上がったと感謝の声が相次いだ。しかし原の挑戦はまだ終わっていなかった。QRコードの国際標準化。国際標準化機構に交渉にあたったのは辻本有伺。その交渉は難航を極めた。原は、誰でも使えるようライセンスや使用料は無料にすることにした。2000年6月、QRコードは国際標準として承認された。その後、携帯電話に読み取り機能が搭載され日本中の人々がQRコードを使うようになっていった。