国連制裁は認めないと主張する北朝鮮の国連大使。発表した声明では「アメリカと追従勢力が時代錯誤な敵視政策を追い求めるならばより悲惨な敗北を迎える」とした。“敵視政策”とは北朝鮮への制裁の実施状況を調査してきた国連安全保障理事会の「専門家パネル」をさす。専門家パネルは核兵器の開発を進める北朝鮮の監視を目的に設立され2009年から毎年調査報告書を発表。今年はサイバー攻撃により約4500億円の資金を獲得し核兵器開発などに充てているなどと警告してきた。しかし今年3月、専門家パネルの任期延長をめぐりロシアが拒否権を行使。パネルは4月末で事実上廃止された。専門家パネルの唯一の日本人委員である須江秀司さんは「大量破壊兵器を含めた安保理決議違反に関する事例がおそらく増えていくだろうということは直感的に感じる。」と話す。須江さんは安保理決議違反が疑われる北朝鮮の取引などを調査してきた。ロシアの拒否権行使の背景にはウクライナ侵攻の中で使用された北朝鮮製のミサイルの存在があるとみている。ミサイル不足などを北朝鮮の兵器で解決したいロシアとロシアの支援を得て核を含む兵器開発を進めたい北朝鮮の利害は一致している。日本政府関係者はロシアは早い段階で拒否権の行使を決断していたとみている。専門家パネルの廃止で北朝鮮は制裁逃れの経済活動などを加速させる恐れがあるが、一方で今回のピンチを実効性のある新たな枠組みづくりに生かすべきだと須江さんは訴える。現在日本はアメリカや韓国とともに国連安保理と切り離すかたちで新たな組織の立ち上げを検討していて、その具体化が急がれる。
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