滋賀・野洲市で起きたある事件の判決が言い渡された。罪名は承諾殺人。30年以上にわたって自宅で介護していた50歳の息子を、高齢の父親が承諾を得て殺害した罪に問われた。判決は実刑ではなく執行猶予がついた。亡くなった男性は、高校1年生のときサッカー部のトレーニング中、路上でトラックにはねられた。脳挫傷の後遺症で寝たきりになり、質問に対して「うん」とこたえるほかは、ほとんどことばを発することができなくなった。息子を殺害した罪に問われた父親。事故後、仕事をしながら献身的な介護を行ってきた。介護について、父親は先月の初公判で「自分の力で息子の体を元に戻してあげたい一心で介護をしていた。奇跡を信じていた」と述べていた。父親は、周囲の人を頼ることにためらいを感じていたことも見えてきた。体力の衰えを感じる中、おととしから平日は息子を介護施設に預けることにしたが、休日は自分で面倒を見たいと自宅での介護を続けた。妻の体調も悪化し、父親の負担が増えたが、近所に暮らす息子の弟に頼ることはなかった。近所の人のコメント。中学生のとき、廷内スケッチの映像。去年12月の早朝、持病の発作で1時間以上の激しい吐き気が父親を襲った。父親は「これ以上息子をみてやれないのではないかと思った」と述べた。父親は息子に「自身も死ぬし、一緒に死のう」などと声をかけた。はっきり返事をしたという息子。首に手をかけた際、抵抗することもなかったという。父親は、みずからも命を絶とうとしたが、妻に見つかり止められた。大津地方裁判所は、懲役3年執行猶予4年の判決を言い渡した。大津地方裁判所・大嶋真理子裁判官は「人の命を奪う行為は許されるものではない」とする一方、「長年の介護の献身ぶりは周囲も認めるところで、深く反省している」などと指摘。今回の裁判。被告の減刑を求める嘆願書が、近所の住民など1700人以上から集まったという。周囲に助けを求められず、思い詰めてしまうケースが全国で後を絶たない。1人で抱え込むことがないよう、周囲につらそうな人がいたら、積極的に関わっていくことも重要だと感じる。