判決について、男性は控訴せず確定した。すでに男性から賠償金が支払われている。裁判では、男性は妻と離婚して、Aさんと交際を進めるつもりだったと説明している。裁判のポイントは、貞操権の侵害。貞操権とは、性的関係を持つ相手を自分の意思で決定できる権利。既婚者と関係を持ちたくないのに、騙されて意に反して関係を持たされた、これは民法の709条に定められている不法行為にあたるとして、こうむった精神的損害に対する慰謝料などを求めた。裁判所はこの訴えを認めた形。独身偽装という言葉が広がるきっかけは、自身も被害に遭った女性が2024年に「独身偽装被害者の会」を立ち上げたこと。被害者の相談に応じたり、情報提供を行ったりしたことで、裁判を起こす人が増え、被害の実態が広く知られるようになった。会が把握しているだけでも、各地で起こされた裁判で、この3年ほどの間に19件で賠償が命じられている。また今年5~6月にかけて、会がウェブ上で実態調査をしたところ、裁判に至っていないケースも含めて、207件の回答が寄せられた。女性が被害を受けたという内容が大半だが、男性が被害を受けたという回答も3件あった。出会いのきっかけは、マッチングアプリによるものが43%、直接対面するリアルが49.3%と半数を占めることがわかった。回答者のうち、交際相手の子を妊娠したという人は、約20%いた。さらに、「強い人間不信に陥った」と答えた人が9割近くを占め、「自殺を考えた」という人も4割以上にのぼっている。被害者の会は、マッチングアプリの運営会社側に、独身だとウソをつく利用者への対応指針の整備など対策の強化を求めていく方針。また被害への備えとして、メッセージのやり取り、動画・写真などは、消さずに残しておくことが重要。専門家は、裁判で賠償が命じられたとしても、課題があると指摘している。大阪大学の島岡教授は「独身偽装の被害実態を見ると、単なる恋愛トラブルではなくて、ストーカー犯罪とか性犯罪などと同様に、被害者の性的尊厳や人格権を侵害する性暴力である。民事賠償の額をもっと被害の実質に見合ったものに高めていく」現在、刑事責任を問う法律がないことについても、「悪質性に見合った刑事処罰の規定を設けることも十分検討に値する」と話している。
