52間の縁側プロジェクトが始まったのは2016年。石井さんが、山崎さんに依頼をした。建設予定地は随分と細長く西側に崖があり、建てられる範囲が条例で限られていた。そんな不便な土地に何を作ろうか?山崎さんの頭にふと浮かんだのは縁側。東京・日本橋に山崎さんの設計事務所がある。52間の縁側のルーツを見せてもらった。江戸時代の錦絵風のスケッチで様々な人達が同じ縁側で過ごすイメージを描いた。これまでライフワークとして実測を行ってきた古い住宅や寺院の縁側。そこから一間、1.8mの尺度が日本人丁度いい間尺と考えた。しかし細かい設計段階で、壁にぶち当たった。高齢者になったことがなく認知症の人たちにとってどういう場所が望ましいかということを想像することもできなかったという。ヒントになったのは居方という考え方。その居方を提唱するのは鈴木毅さん。歩き方が独特なように同じようにそこに人がいるだけでもいろんな居方があると考えているという。鈴木さんが居方を問いはじめたのは町の再開発が盛んになりだした1990年代。多くの計画で求められたのは賑い。効率的に集客できるようにデザインされた街。しかしただいることができる場所が失われていった。鈴木さんはその頃パリを訪れていたが、公園でステキな居方に出会う。思い思いに佇む、居合わせるという居方が自然と生まれる建築が山崎さんのたどり着いた答えだった。
52間の縁側にはちょっと体を預けられる柱や、何気ないおしゃべりが始まるベンチ。山崎さんは、居方が自然に生まれる仕掛けをいくつも潜ませた。それは地域の子供たちにも必要なことだった。
52間の縁側にはちょっと体を預けられる柱や、何気ないおしゃべりが始まるベンチ。山崎さんは、居方が自然に生まれる仕掛けをいくつも潜ませた。それは地域の子供たちにも必要なことだった。
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