撮影終盤、山田監督が大切にしている場面を撮る日がやってきた。つらい仕事をしている息子が一枚のせんべいを食べた時に言う「こういったものは人間を慰めるためにあるんだな。腹の足しっていうのは心の足し。(中略)俺もこういう仕事に就けばよかった。こういう仕事は裏切らないからな」というセリフのシーン。山田監督はその時の息子の気持ちを掘り下げ、演技に細かい指示を出した。その後、撮影はクランクアップを迎えた。本来は喜びを分かち合う場だが、山田監督は今回の仕事を最後に退職するスタッフを呼び、「この2人を映画界につなぎ止められなかった日本の映画の状況を悔しく腹立たしく思う」などと話した上で、2人に感謝の気持ちを伝えた。
今月、宮崎県で「こんにちは、母さん」の先行上映が行われた。映画館のない町で、地元の住民が中心となって30年続けてきた山田映画の上映会。大分で音楽を教えている生野聡さんは、山田監督の新作を特別な思いで待っていた。生野さんはもともと、東京の小学校で音楽の教員をしていたが、6年前に体調を崩して退職した。去年故郷に戻り、再び音楽の仕事を始めた。支えになったのは、生きる喜びも悲しみも優しく描く山田監督の映画だったという。今回の上映会には山田監督の姿もあり、客席に混じって観客たちと映画を観た。「あそこはこういうふうに撮るべきだった」などと後悔する場面は多々あるが、観客が笑って泣いて、拍手してくれるのが監督としては幸せな瞬間だという。
今月、宮崎県で「こんにちは、母さん」の先行上映が行われた。映画館のない町で、地元の住民が中心となって30年続けてきた山田映画の上映会。大分で音楽を教えている生野聡さんは、山田監督の新作を特別な思いで待っていた。生野さんはもともと、東京の小学校で音楽の教員をしていたが、6年前に体調を崩して退職した。去年故郷に戻り、再び音楽の仕事を始めた。支えになったのは、生きる喜びも悲しみも優しく描く山田監督の映画だったという。今回の上映会には山田監督の姿もあり、客席に混じって観客たちと映画を観た。「あそこはこういうふうに撮るべきだった」などと後悔する場面は多々あるが、観客が笑って泣いて、拍手してくれるのが監督としては幸せな瞬間だという。