愛媛県の山奥にある丸い茅葺き屋根の建物はアメリカ人のベンジャミンさんが日本の古武術を指導する武道場だった。土地の広さは5反(1500坪)。4軒の農家が所有していた棚田だったが、4軒とも米農家を廃業し耕作放棄地となっていた。5年前に購入して古武術の道場を建築したという。建物の前には竹で作った結界があった。鳥居のようなものだという。山の水で手を清める手水鉢もあった。周りにある大きな石は友人の建設会社の社長から譲り受け、自ら重機や三又を使って配置した。道場は夫婦2人で建築した。裏山の檜を200本「立ち枯らし」で切って建材にした。「立ち枯らし」は木を切らずに皮を剥ぎ、半年から1年放置して乾燥させ、水分が抜けて軽くなってから木を切る伐採方法。住宅の建築現場で作業見習いをして、ほぞの切り方や組み方を観察、大工の技術を習得した。夫婦2人で重機を使わず2ヵ月で構造を完成。茅葺き職人養成講座を夫婦で受講し、四国唯一の茅葺き職人・川上義範さんから学んだ。茅場までは片道2時間かかり、屋根の材料となる茅1800束を集めるために4年を要した。川上さん、川上さんが連れて来た職人、一緒に受講した仲間など総勢16人で5日間で一気に葺いた。傷みやすい頂上部分はガルバリウム鋼板。菱形の鱗張りで60年くらい持つという。茅葺きとの境目には杉皮を張っている。茅葺き屋根は20年毎に修復が必要だという。修復を容易にするため庇は竹にしている。