コム・デ・ギャルソンのデザイナーである川久保玲が「Holes」を発表した1982年、冨永愛が誕生した。2017年、メトロポリタン美術館で川久保の特別展が開催されている。「Holes」の発表当時、「貧乏に見せたい人のための新しいファッション」、「核の惨禍から生き残ったもののよう」などと非難囂々だった。アレクサンドル・サンソン氏によると、美しさの基準は西洋の価値観によって決定づけられ、華やかな色の組み合わせ、対称性などが主流だった。だが、「Holes」は喪服を想起させる黒で、セーターに空いた穴の位置、大きさともに不規則。川久保はこれまでにないスタイルを作ったと評価する声もあり、ミラノコレクションでは多くのデザイナーが黒を基調とした服を発表する。87年には権威あるフランスの業界紙でコム・デ・ギャルソンが1位に輝いた。マルタン・マルジェラ、アレクサンダー・マックイーンらは川久保玲に強い影響を受けたとされる。