千葉県の三番瀬は西は浦安市から東は習志野市にまたがるという1800ヘクタールの広大な干潟。まず訪れたのは三番瀬に面する市川市の市川漁港。ここから出る遊覧船に乗ると三番瀬の名物を見ることができる。案内してくれるのは三番瀬の環境保護活動を行う安達宏之。そして三番瀬の冬を代表する名物が、見つけたのは立ち並ぶくい。実はこれ、のりの養殖場。ここ三番瀬は江戸時代から幕府に献上する海産物をとる海に指定されるほど豊かだった。のりの養殖は明治時代に始まり江戸前ののりの1つとして広く知られるようになった。三番瀬ののりはどんな味なのか老舗ののり専門店を訪ねた。3代目店主の加藤洋一は40年近く、三番瀬ののりの買い付けや販売に携わってきた。中でも収穫の始まる12月ごろにとれたものは、味と香りが最もすぐれているといわれている。豊かな海産物を育む三番瀬の干潟の恵みを求めて生き物たちもやって来る。自然学習施設の職員の大谷雄一郎によると三番瀬はバードウォッチングに最適な場所だという。この時期、多く見られるのがミヤコドリ。渡り鳥で日本に飛来するうちの3分の2は三番瀬にやって来るといわれている。ミヤコドリは二枚貝を好んで食べる。細長いくちばしで器用にこじあけて食べる。最後に訪ねたのは船橋市湊町。三番瀬の漁師の文化を後世に伝える人たちがいる。お囃子に誘われ町内会の集会所に入ると子どもたちがお面をつけてユニークな踊りを踊っていた。この踊りは明治30年ごろ、地元の漁師が大漁祈願で始めたばか面踊り。指導役の元漁師、滝口武によると動きとお面で漁師の喜怒哀楽を自由に表現するのがばか面踊りの特徴だという。この踊りは漁師の暮らしそのものが表現されている。三番瀬の恵みをこれからも残していきたいと願う人々に出会う旅だった。