大学卒業後に、都市の再開発などを請け負う大手設計事務所に就職した山崎さん。仕事にやりがいを感じながら充実した日々を送っていた。しかし6年が経過したことに大きなプロジェクトは収益のために建築され、設計するのがお金の手段になるという。誰かのためにという心では行われず、そこに疑問がわいたという。そんな時転機となったのは実家の建て替え。広い庭の中に小さな箱をつなげておいたような庭の中の家。父の龍太郎さんが定年を迎えた時に山崎さんが設計した。5つの部屋を少しずつずらしながら縦に細長くつなげた平屋のワンルーム。仕切りとなるドアはない。庭仕事が趣味の礼子さんのためにどこからでも庭を眺められる窓の多い作りに。開放的すぎる空間に両親は戸惑いもあったが、しかし暮らしてみると孤独感はないという。定年を迎えた夫婦がこれからの人生を過ごす家。使う人に優しく寄り添い、暮らしを想像して作られた。