介護施設を買収し現金を吸い取った悪質な手口を前回の放送で伝えた。実はほぼ同じ時期に老舗の靴メーカーを倒産に追い込んでいたことが判明。800足の靴も持ち去られていた。丸吉肇さんは一昨年まで大阪の老舗靴メーカー新宿屋の社長を務めていた。職人が一つ一つ、オーダーメードで作り上げる高級な革靴。サメやトカゲなどの希少な革が使われている。震災復興の役に立ちたいと、宮城県気仙沼市特産のヨシキリザメの皮を使った靴を開発し、テレビや新聞にも取り上げられた。ところが、会社の経営から退いたあとの去年11月、突然、破産申し立てをするという通知が、更に保管してあった800足ほどの靴がなくなったと訴える。丸吉さんは数年前から現場に専念したいと考え、M&Aで経営はプロに任せることを決めた。そこに現れたのが、全国で介護事業などを展開するというA氏だった。しかし、このA氏は、中小企業を狙った悪質M&A業者として、番組が追求してきた人物だった。買収した会社の預金を抜き取るなどして複数の介護事業所を閉鎖や倒産寸前に追い込んでいた。丸吉さんは取引先の信用金庫と仲介会社の紹介だったこともあり、A氏のことを信用し、一昨年10月株式を全て譲渡した。ところが、社長となったA氏は半年たったころから会社にあまり姿を見せなくなった。税金や保険の督促状が届くようになり従業員への給料も未払いとなった。そして、去年11月。A氏側の弁護士から、破産申し立てを行うという書類が届いた。そこには、立ち入りを禁じられている間に約800足の靴が持ち出されたとみられている。更に取材を進めると靴の一部がオークションサイトで格安で売られていたことも分かった。出品していた都内の中古品業者を訪ねるとA氏自らが120足ほどの靴を持ち込んだと証言した。サイトで売られていた靴を丸吉さんに見てもらうと、A氏は1足10万円から20万円する革靴を1足1000円あまり、合計13万円ほどで売却していた。結局、弁護士は辞任し、破産の手続きは行われずA氏が社長のまま新宿屋は事実上の倒産状態となった。専門家はこうした行為について、違法性を問われる場合もあると指摘する。姿を消したA氏。去年9月に直撃取材したマンションは既に引き払われていた。A氏の携帯電話は現在使われていない。メールも届かなかった。新宿屋は従業員も全員退職に追い込まれた。