傘を掲げて香港の中心部を占拠する学生や市民。民主的な選挙制度の実現を求め2か月余りにわたり続いた雨傘運動。中心的な役割を担った一人、朱耀明さん。雨傘運動から10年、香港では反政府的な行動や言動への統制が強まり、朱さんも4年前、香港を離れた。先月、日本に招かれた朱さんがこうした現状を語った。東京大学駒場キャンパスで開かれたシンポジウムに登壇した朱さん。朱さんの危機感の原点は1989年の天安門事件にさかのぼる。北京の天安門広場で学生たちが言論の自由や腐敗した官僚の打倒を求めて行った抗議運動。朱さんも事件の直前まで学生たちの支援に関わった。しかし、香港に戻った直後目にしたのは、軍が若者たちを武力で鎮圧していく光景だった。香港の中国への返還が8年後に迫る中、朱さんは大きな危機感を抱いた。しかし、香港では行動や言論の自由への統制が強まった。雨傘運動は当局に排除され、朱さんはデモの参加者に道路の占拠を呼びかけたとして執行猶予付きの有罪判決を受けた。2019年には民主化を求める香港市民の大規模デモが起きたが、こうした動きに中国政府は翌年反政府的な動きを取り締まる香港国家安全維持法を施行した。朱さんは香港を離れ台湾に移り住むことを決意した。活動停止に追い込まれた民主派寄りの新聞、リンゴ日報の創業者・黎智英氏や、朱さんが雨傘運動で一緒に活動した戴耀廷氏は国家安全維持法に違反したとして裁判が続き、すでに3年以上拘留されている。香港へは戻れないと感じている朱さん。外にいるからこそ、香港の現状を世界に発信し続けることが自らの役割だと感じている。香港では今年、国家安全維持法を補完する国家安全条例も施行されて、統制はどんどん強まっている。
住所: 東京都目黒区駒場3-8-1
URL: http://www.u-tokyo.ac.jp/
URL: http://www.u-tokyo.ac.jp/