地熱開発への拒否反応を示す温泉地が多い中、温泉組合自らが地熱発電に乗り出しブレイクスルーを果たした街が。土湯温泉(福島市)は一時は観光客が激減し、存続も危ぶまれていたが、今は客を取り戻し、新たに旅館の建設も始まるなど温泉街は蘇った。救世主が土湯温泉バイナリー発電所。バイナリー発電は水の蒸気ではなく、水より沸点の低いアンモニアなどを蒸発させ、タービンを回す方法。100℃以下でも蒸気を発生させられるため、温泉の源泉などでも発電でき、その分深くまで掘る必要がない。日本の温泉街でも活用ができると数年前から注目され始めた発電方法。土湯温泉では組合が主導してバイナリー発電を取り入れた。土湯温泉は2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた。旅館を被災者の避難場所として提供したことで原発事故に関わる風評被害にもさらされ客数が激減。補助金を活用しバイナリー発電所建設を決断。2015年に完成すると年間1億円もの売電収入をもたらした。収入をもとに新たな街の名物も誕生していた。亜熱帯で育つオニテナガエビを発電後の温水を有効活用し、陸上養殖している。温泉組合が空き家を買い取って作ったカフェでは養殖のエビ釣りも楽しめる。年間約3000人の観光客が訪れる。温泉の熱で発酵させるどぶろくやシードルも人気。今月、温泉熱で作る納豆工場をオープンした。地熱発電への理解が街に新たな可能性を生み出していた。徐々に普及が始まったバイナリー発電だが、小規模なものがほとんどという現実もあり、これだけで日本の電力源を抜本的に変えるには至らない。地熱発電で1番日本で大きいのは八丁原発電所の11万キロワット。原発は一番小さいもので50万キロワットはあるという。