広島市内にある映画館に100人を超える高校生と大学生が集まった。その視線の先にあったのは映画「オッペンハイマー」。原爆開発を指揮した科学者オッペンハイマーの栄光と没落を描いた物語。開発から原爆投下、さらにその後の苦悩をオッペンハイマーの目線で描いている。この映画を広島でどう受け取るべきか。広島市出身の映画人・部谷京子さんはあえて広島でこの試写会を企画した。部谷さんは映画のセットなどをデザインするこの道47年の美術監督で、Shall we ダンス?など日本を代表する数多くの作品を手掛けてきた。力を入れているのは原爆や平和に関わる作品の製作。若い頃はあえて平和に関するテーマから距離を置いていたが、その後は広島で映画祭を主催するなど広島や平和への思いを伝えてきた。「オッペンハイマー」にどう向き合うかは自らを問われる難しいものだった。アメリカが原爆投下に進む道のりをまざまざと見せつけられる映画だが、この映画から目を背けるのではなく、何を考えるかを若い世代に問いたいと動き始めた。議論を深めたいと部谷さんが声をかけたのが元広島市長の平岡敬さん、核兵器廃絶を訴えてきたアメリカ出身の詩人・アーサー・ビナードさん、呉市出身の映画監督・森達也さん。まず指摘されたのは被爆の実相がほとんど描かれていないこと。高校生からも意見が上がった。部谷さんは「確かに広島・長崎の実相は描かれていないが、そこの部分はお前たちが描いてほしい、と託されているような気が今はする」とコメント。クリストファー・ノーラン監督のインタビューの全文はNHKのホームページの中にあるクローズアップ現代取材ノートで読むことができる。