次は”現代の名工”に選ばれたはんこ職人の辻太一さん(84)。はんこを彫った有名人はマイケル・ジャクソン。1987年の大阪公演の際にマネジャーが店を訪れ、マイケルのハンコを注文していった。当て字は辻さんが考えた「舞蹴」(マイケル)と「雀邨」(ジャクソン)。後日、代金とともにマイケル直筆のサイン入りツアーパンフレットが届いたそう。そんな辻さんのお宝は岸田劉生の掛け軸。岸田劉生は「麗子微笑」で知られる洋画界の巨匠だが、お宝は南画風の掛け軸。40年来の骨董好きで、オークションで見つけて落札した。落札額は30~50万円くらいだったそう。元来「三酸図」とは、「儒教・道教・仏教を代表する人物が酢を舐め、皆顔をしかめた」という故事を描いたもので、三教の教えが根本的に同じであることを比喩的に表している。「劉生はこれを3種の果実で表した」とオークションサイトで説明されていた。本人評価額は50万円だったが、鑑定結果は120万円と大幅アップ。大河内さんは「本物で間違いない。岸田劉生は38歳で亡くなっています。30歳頃から日本画を描きはじめ、30歳代後半くらいの作品ではないかと思う。劉生自身は東洋の思想に傾倒し、とても勉強している。故事を踏まえた上でそれを果物に置き換えて作品を作ったというウィットと、中国に対する造詣の深さが感じ取られる面白い作品」と評価した。