角田光代さん最新作「明日、あたらしい歌をうたう」を紹介。主人公の新は、母のくすかと暮らす中学生。物心ついたときから1枚の写真が飾られていた。幼い頃からそれはお父さんだとくすかは答えるのであった。ある日、友人がその写真を見て誰もが知るバンドマンだと教えてくれた。さらに、配偶者はいて新は隠し子だとも言うのだった。それから新は父親について知ったことを母には隠し、父かもしれない人の歌を隠れて聴くようになる。角田さんは、ミュージシャンの名前を小説の中では出していないが、読む人が読めばあの人かとわかるという。角田さんはそのミュージシャンの長らくのファンで、その人のうたう歌に救われたり、助けてもらったことが多いという。そういうのを書いておきたい気持ちがあったという。物語には母・くすかの視点で新が生まれるまでの人生も描かれている。くすかは両親から興味を持たれず透明な存在として過ごすなど辛い少女時代を過ごしていた。偶然入った店のBGMから「大丈夫さ、うまくやるさ、すべては始まったばかりさ。」と歌う曲が流れてくる。その瞬間無意識に涙が流れくすかの世界がガラリと変わった。角田さんは、どうして自分が毎日生きているんか本当にわからない人がパッと世界が色づく瞬間を書きたかったという。物語は進み、偶然目にした手紙によって父親が有名なバンドマンではないことを知る。なぜくすかはウソをつき続けてきたのか、真実が明かされた時、新とくすかの心に響いていた音楽が重なり合う。角田さんは、最後はハッピーに終わるがこれから生きていく中で一瞬の出来事で、本当に辛くて嫌なことが待ち構えているのが現実だという。でもこれがあったからこれからも生きていけると思えるものと人が出会う瞬間を書きたいと思ってたという。
