子どもの心臓病手術に使われる心臓パッチ「シンフォリウム」を開発したのは、医師と町工場、大企業の3社で、池井戸潤さんの人気小説「下町ロケットガウディ計画」のモチーフにもなっている。今年6月に実用化が始まったシンフォリウムの開発の裏側に迫った。高槻市の病院では心臓に穴・肺動脈がないなど複数疾患のある難病の2歳女の子の心臓手術が行われた。執刀の根本医師はシンフォリウムの発案者でもある。シンフォリウムは心臓に開いた穴をふさいだり、血管を広げたりする際に使用される修復パッチで子どもの成長に合わせておよそ2倍まで伸びるため再手術のリスク低減になるという。手術は無事成功した。従来のパッチは伸びないため子供が成長するとサイズが合わなくなり交換の再手術が必要だったが命の危険と経済面での負担が大きかった。再手術のリスク低減につながるシンフォリウムの開発のカギは糸が編みこまれたような構造。開発したのは福井にある創業80年の町工場の繊維メーカー福井経編興業、衣類などの生地を年間およそ8000トン生産している。衣類の生地の生産だけでは今後の企業経営が難しいという危機感があったが、開発前に根本教授の心臓手術に立会い緊迫感と涙が止まらなくなりやらなければならない仕事だと感じたという。リクエストされた2倍に伸びる医療生地の開発は険しく、技術者たちは困惑したが創業から編み続けた生地サンプル10万点以上からヒントを得た。体内で溶ける糸と溶けない糸で編まれ手術後2年で糸が溶け、残った糸がおよそ2倍まで伸びる編み方を開発した。しかし製品化するには大企業の力が必要で高木社長はある企業に打診をした。