沖縄本島から360kmほどの距離にある南大東島。サンゴ礁が隆起してできた島で1200人ほどが暮らしている。島には砂浜がなく、フェリーを降りるにもゴンドラを使って上陸する。島はさとうきび畑が多く、9月半ばには青々と茂っている。奥山武さんは生まれも育ちも南大東島でさとうきび畑農家の4代目だという。さとうきびの収穫は12月、そこまでに雨は降るのか、農家の心配は尽きない。かつて無人島だった南大東島、120年前に八丈島の人たちが入植した。ヤシの木を伐採し、人はさとうきび畑を作った。奥山さんは高校進学のため1度は島を出たが、結婚を機に戻ってきたという。「もっと早く戻ってくればよかった」と語る奥山さん。しかしさとうきび畑だけで食べていくのは難しく、漁師としての仕事もしているという。メバチマグロなど、島のまわりマグロの宝庫となっている。奥山さんは厳しい部分もあるが自然相手なので楽しいと語ってくれた。奥山さんの息子である翔介さんは、高校進学のために島を離れる日が近づいている。仕事を掛け持ちしている奥山さんを、翔介さんは尊敬していると話す。奥山さん自身も息子さんや次世代のために島を良くしたいと考えているのだと語ってくれた。島では25年前から子どもたちの民謡教室が毎晩行われている。晴れ舞台となる祭りが迫っているのだという。子どもたちを教える大城梓さんは、かつて自分もこの教室で民謡を学んだという。出産を機に島に戻ってきたという。島は子どもが育てやすく、大城さん自身も三線とともに暮らせる環境が気に入っているという。大城さんは「おじい」と呼ぶ師匠から教わったことを子どもたちに伝えたいのだと語ってくれた。
子どもたちが民謡を披露する豊年祭当日、人々は練り歩き豊作を祈る。沖縄の祭りで神輿がでるのは珍しいが、八丈島の文化が入り込んだこの島ならではだという。祭りでは奉納相撲が行われ、大人も子ども土俵に上がる。中でも親子相撲。山城大輝さんは息子の皇大さんと相撲をとる。皇大さんは進学のために島を離れる予定だが、いつかはお父さんと一緒に島で働きたいと考えているという。山本さん親子が土俵で向かい合う、一見お父さんが勝利したかに見える勝負だったが会場からは「取り直し」を求める声。今度は息子の皇大さんがお父さんを倒した。4月には島を出る皇大さんに対して、山本さんは楽しい思い出をしっかり作りたいと話した。祭りの締めくくりは民謡教室の子どもたちの演奏、島を出た高校生も駆けつける。大城さんは子どもたちに「自分たちの島をずっと誇りに思っていてほしい」と語った。南大東島の人たちは島を作り、繋いでいく。