座礁から10時間、佐々木はクモの巣のようなロープを突破するにはスタティック降下を使うしかないと考えた。これまで特殊救難隊では最初にヘリからロープを垂らし船に降りていた。しかしロープが船に絡まって隊員やヘリが墜落する危険があり救出を断念せざるを得ない現場が幾度もあった。そこで生み出されたのが佐々木が考えたスタティック降下だった。ロープを垂らすのではなく袋に入れて繰り出しながら降りる。これを救難現場で応用するにはロープのさばき方や着地の動作など慣れた方法を替えなければならない。佐々木は1年かけて第5隊の仲間と検証を重ねた。実践ではほぼ使ったことがないスタティック降下。だが自分たちがやるしかない。午前8時40分、佐々木たちの降下作戦が始まった。この日のヘリの基調はエースパイロットの森公博だった。強風に揺られるヘリを森がコントロール。ヘリを安定させた瞬間、佐々木が降りていった。佐々木は見事着地に成功し、救助を待つ畑教官の元へ急行した。佐々木が声を掛けると畑教官は「下の教室に学生がいます。彼らを先に救出してください」と言った。意識は朦朧とし骨折した教官もいたので佐々木は、先に教官たちを救出することを決断。9時1分、畑教官らが救助され病院に搬送された。船内では池田早希らが水に浸かり耐えていた。
