オーストラリアの議会で可決された16歳未満の子どもによるSNSの利用を禁止する法案。今回の法案ではSNSの運営会社に対し16歳未満の子どもが利用できないような措置を講じることを義務づけている。違反した場合は最大で日本円にして約49億円の罰金が科される。保護者や子ども自身への罰則はない。禁止の対象になると想定されるのはインスタグラムやTikTokなど。YouTubeなど教育目的でも使われるものは禁止の対象外になる想定。オーストラリア・アルバニージー首相は「プラットフォーム企業は子どもたちの安全を最優先させる社会的な責任を負っている」と述べ法案が可決された意義を強調。SNSにのめり込むことによって引き起こされる生活や心の健康への悪影響、悪質ないじめや性被害、厳しい法案の背景には規制を求める保護者の声がある。女性の14歳の息子は今年1月、摂食障害の末にみずから命を絶った。息子は自分が太っていると感じダイエットに関する情報を収集するうちにSNSに極端な情報が繰り返し表示されるようになり過度な食事制限などにのめり込んでいった。SNSで友人から「自殺したら」などとことばをかけられたこともあった。オーストラリアの最新の世論調査では国民の約77%が法案に賛成している。女性は「中毒症状。ずっと画面をスクロールしてしまう」と語った。法案については懸念の声も出ている。ユニセフのオーストラリアの担当者が今月21日、「ソーシャルメディアが禁止されることで子どもたちがより隠された規制のないオンライン空間に追いやられるだけでなく、子どもたち自身の幸福に不可欠な要素にもアクセスできなくなる」と表明。旧フェイスブックのメタは今月26日、「政府によって導入されるいずれの年齢制限も尊重する」とコメント。その一方で「十分な協議や根拠がないまま政府が法案の可決を急ぎ、実施について、まだ多くの不明な点がある」と懸念を示している。日本では三原こども政策担当大臣がネット上の被害から子どもを守る方策を検討するために設けた作業部会で、海外の取り組みなども把握しながら議論を進める考えを示した。三原こども政策相は「青少年が安全安心にインターネットが利用できるような丁寧な議論を行いたい」と語った。SNSの利用について、若い世代と親世代はどう思っているのか。それぞれ聞いた。SNSの利用禁止について若い世代は賛成2、反対13だったのに対して、親世代は賛成12、反対3と、正反対の結果になった。千葉大学教育学部・藤川大祐教授はSNSの禁止について子どもが事件や事故に遭うリスクが減るメリットはあるとしたうえで「本来はSNS上のすべての利用を禁止するべきではなく安全ではない情報だけブロックするのが望ましい。青少年にとっても有用な情報、必要な情報にもアクセスできなくなる。グローバル企業のSNSをやっている人たちが、これを機に安全地策を進めるかどうかが注目点」と述べた。オーストラリア政府は1年後をメドにこの法案を施行したいとしている。こうした議論はフランスや米国など各国でも進んでいて、SNSの利点と課題をどう考えるのか摸索が続いている。