菊池はこの日、酒飲みが集まる山小屋である青年小屋に立ち寄った。青年小屋の二つ名は「遠い飲み屋」であり、登山後の一杯とオーナーとの語らいを求め多くの登山者たちが訪れている。青年小屋は竹内一家で運営している。敬一は山岳レスキューのレジェンドであり、平成17年にはエベレスト(チョモランマ)の登頂にも成功し、長年に渡って山岳救助の現場に携わってきた。一方で敬一はこれまで多くの仲間達を山で亡くしており、今の世代の登山者にはデバイスで地図を見るだけではなく自分の実力を知ったうえで自然をもっと見てほしいなどと語った。この日、敬一は山梨県警本部・北杜警察署合同山岳救助訓練に講師として参加し、リードの手本を見せ、参加者たちにレクチャーした。敬一は救助に向かった人がそのまま死んでしまったこともあり、下山する最後まで迅速に気を抜かずできるようになってほしいなどと伝えた。この日、山は悪天候に見舞われた。