航空自衛隊の防府北基地がある山口県防府市に住む朝長雅彦さん（56）は元F-15のパイロット。バツイチ独身で朝は筋トレから始まり、ヨーグルトやハチミツで作った特製スムージーを飲む。洗濯も自分で完璧にこなす。2022年7月のラストフライトは娘＆孫が見届けてくれた。離婚した時に12歳だった長女・美咲さんは母親になっていた。定年退官の日となった2022年9月22日に訪れたのは、現役時代の厳しい記憶が蘇る防府北基地内の航空学生顕彰館だった。それから2週間後、朝長は航空学生が集うBARをオープンするため焼肉店で修行を始めた。長い独身生活のおかげで料理の腕は確かだった。2023年3月になると物件探しを始めた。
朝長が高校時代までを過ごした故郷・長崎市を退官後初めて訪れた。磨き上げた革靴で矢上普賢岳（439m）を登った。母は息子の無事を祈って毎月登っていたという。東長崎イーグルスは少年時代に野球を覚えた原点。子供たちとキャッチボールした。野球は高校まで続け、サードでキャプテンだった。部屋には高校時代のグローブが飾ってあった。
2023年9月、朝長がオープンするBAR「Time SUN」の改装が終わった。「Time」は朝長のコールサインだった。9月22日に57歳になり、両親から電話でお祝いされた。店にはパイロット時代から集めた自慢のウイスキーが並ぶ。オープンと同時に航空自衛隊の先輩・後輩が続々と店を訪れた。