高野さんは「待ったなしの拉致問題だが、北朝鮮はすでに解決済みだとする立場を崩していない。その北朝鮮をいかにして交渉のテーブルにつかせるかが課題だが、突破口を開く上の鍵は1つ目は米朝関係。アメリカのトランプ大統領は1期目で金正恩総書記のあいだで繰り返し信書を交わした。2018年から2年間で3度の米朝首脳会談を行った。これを踏まえてトランプ大統領は2期目のスタート早々から「金総書記との関係は良い」としている。金総書記からすると期待してのぞんだ米朝首脳会談が決裂した苦い経験がある。そこから当面は軍事協力を深めているロシアを後ろ盾に核戦略の強化に力を入れて行くとみられるが、金総書記と同様にトップ同士のディールを好むトランプ大統領の4年の任期中に対話に応じる可能性はあるとみている。トランプ大統領は亡くなった有本さんをはじめ拉致被害者家族と面会したことがあり、米中首脳会談では日本人の拉致問題を取り上げた。米による強い後押しは拉致問題を前進させるうえで重要だと思う。2つ目は日朝関係。去年2月、当時の岸田総理大臣は国会で拉致問題をめぐり「いまこそ大胆に現状を変えていかなければならない。その結果につなげられるよう最大限努力したい。」と述べた。これに対し北朝鮮は「拉致問題にこだわるなら首相の構想は人気取りに過ぎないという評価を免れないだろう」、「心から日本が関係改善したいのならば政治的勇断を下すことが必要」と譲歩を迫った。金総書記の妹・与正氏は去年3月「岸田首相は最近もこれまでとは別のルートでできるだけ早い時期に我が国の国務委員長に直接会いたいという意向を伝えてきた」と談話を発表した。これで日本政府のメッセージが水面下を含めて複数のルートで北朝鮮指導部の中枢に伝わっていたことがわかる。2004年以来3度目の日朝首脳会談をいつ開催できるかは見通せないが、北朝鮮は拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を精算し国交正常化を目指すとした2002年の「日朝ピョンヤン宣言」を破棄していない。経済の立て直しが喫緊の課題である北朝鮮にとって日本による支援への期待は大きい。きのうは金正日氏の誕生日だった。金総書記は父の遺体が安置されている宮殿を参拝したが、父の意向に頼らず独自色を打ち出してきている。石破総理大臣は日朝首脳会談の早期実現に向けて自らが先頭に立って取り組む考えを強調している。」などと述べた。