400以上もの店舗が軒を連ねる東京・築地場外市場。外国人観光客も多く訪れにぎわいを見せている。通りで一番の人だかりができていたのが1947年創業の「きつねや」。目を引くのが、カウンターの目の前で煮えたぎる大鍋。70年以上継ぎ足し続ける八丁みそベースのタレでじっくりと煮込まれた牛ホルモン。ご飯の上にたっぷり盛り付ければ看板メニューのホルモン丼が完成。築地の朝の始まりとともに開店の準備を始めたのは、きつねやの3代目社長・宇治毅さんと妻の直美さん。通りにみその香りが漂い始めると、朝6時半の開店を前に早くもお客さんが列を作っていく。先頭にいたのは、10年近く通い詰める常連客。午前6時半明かりがともり開店。1日の注文数は400杯ほどに上る。驚くべきは、その提供の速さ。注文を終えてから提供までわずか3秒。価格についても、昨今の物価高の中、安く味わってほしいと値上げを極力控えてきた。一方で、味を守るためのお金は惜しまない。最も大切な大鍋は100万円以上かけた。時にはぶつかりながら夫婦で店を守ってきたが、この数年間は逆境の連続だった。2017年に場外市場を襲った火災。およそ15時間燃え続け7棟が全焼。火元は店のすぐ近くだった。