続いて沖縄県・西表島で南の海を“走る”花畑を紹介する。出現するのは夏の大潮の日のみで、真っ白な雄花が直立した状態で海面を走る。この植物は海底から生える海草「ウミショウブ」で、昆布などの海藻類とは別の植物。ウミショウブはかつて陸地に花を咲かせる植物だったが、生存競争の結果光合成が安定的に行え、他の植物があまりいなかった浅い砂地の海に進出した。ウミショウブの雄花は2ミリ程度の雪だるま状の白い粒で、ウミショウブの根本から分離して海上で開花して漂う。雄花の開花が近づくとウミショウブの根元部分から気泡が次々と発生し、泡に乗って蕾が浮上し、開花と同時に反り返った花びらが海水を抱え込むことで水面で立ち上がっているように見える。立ち上がった雄花は風を受けて滑るように海面を走り出し、干潮を迎える頃にウミショウブの雌花が海面に姿を現す。雌花に海面を走る雄花が引っかかり、中央部分の雌しべにくっついて受粉が行われる。受粉を終えて秋ごろになるとウミショウブに5cmほどの実ができ、中から浮袋の付いた種が出てくる。水面に浮上した種はゆっくりと漂い、数時間経つと海底に沈んで根をはる。一方軒年は西表島近海でアオウミガメの個体数が増えていることもあってエサのウミショウブを食べて無くなるスピードが早くなり、群生域が減少傾向にある。アオウミガメは元々西表島などで食用だったことから個体数が減少してきたが、近年ウミガメを食べる文化が衰退していることから個体数が安定して増加傾向に転じているという。そこで西表島ではウミショウブを保護するための柵を設置し、ウミショウブの苗を柵の中に植える活動も行われている。この他北海道の笹について紹介を行った。