全国人民代表大会では中国首相による会見が毎年、実施されてきたが、今年は李強首相による会見が取りやめとなった。宮内篤志解説記者が北京に駐在していた当時、温家宝首相が3時間にわたって熱弁を振るったという。会見の取りやめについて様々な憶測が飛ぶなか、国際社会からは透明性の低下、説明責任の放棄といった懸念が強まることが予想される。これまで中国共産党は一党支配を正当化する根拠として経済成長を掲げてきたが、経済成長に陰りが生じると、習近平国家主席は経済成長を可能にするには国家安全が優先へシフト。体制存続を図る上で、西側諸国が掲げる自由、民主主義といった価値観が浸透することを危惧し、社会の隅々まで統制を強化する方向へ突き進んでいる。改正された反スパイ法では国民による密告も奨励され、スパイの摘発などを担う国家安全省の発言力は強まっている。ただ、治安機関が経済にすら口に出す状況ともなれば、政府が発表する統計、データに疑惑が持たれかねない。宮内解説記者は「習政権の姿勢に厳しい目を向けていく必要がある」などと語った。