今年、山口市徳地診療所の中嶋裕医師が”やぶ医者大賞”に選ばれた。現在は下手な医者を意味する“やぶ医者”は、元々は兵庫・養父市にいた“養父の名医”を意味し、市が地域医療に貢献する医師に賞を贈っている。中嶋さんが勤務するのは人口5000人ほどの山口市徳地地域。年々高齢化が進み、地域の約6割が65歳以上の高齢者。3年ほど前、地域に残っていた民間の医院も医師の高齢化で閉院した。地域の医療を維持しようと、市が開設したのが徳地診療所。中嶋さんはここでの勤務を志願したという。常勤の医師は中嶋さんただ1人で、総合診療医としてかぜやけがの治療など幅広い分野で医療を提供している。かつては大きな病院にも勤務した中嶋さんは、医療の担い手が少ない地域からの患者の多くが適切な医療を受けられていない現実に気付いた。その後、萩市の見島や下関市の角島など離島で経験を積み、高齢者など地域の人たちの日常的なケアが大切だと気付いた。中嶋さんが心がけているのは、日常的な診療を受けてもらうためにできるだけ高齢者などのニーズに応じること。面積が広い徳地地域で診療所に来ることが困難な人たちのため、自らが出向いているという。多くの人が集まれるよう診療は集会所で行う。移動手段がない人や運転が不安な人たちのために、月に2回ほど診療の合間を縫って巡回している。さらに外出が困難な人には個別に自宅を訪問して診療を行っている。