先週台湾では新しい総統に頼清徳氏が就任したが、その就任演説に中国が猛反発している。今回の就任演説もまさに中国の逆鱗に触れるものだったと言える。どのような内容だったのだろうか。基本的には中国との関係において統一も受け入れず、独立もしないという現状維持を強調したものだった。これは前総統の蔡英文の路線を踏襲するもので中国を過度に刺激しないことで台湾の安全を確保しようという狙い。ただ、実際には中国の反発を招く内容も含まれていた。台湾について主権が独立した国家だと述べた点や中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しないと述べた点など。中国からすれば一つの中国という主張を否定された形となるため連日大々的に批判キャンペーンを繰り広げている。なぜそうした内容を盛り込んだのだろうか。こうした言い方は台湾をめぐる現状について従来からの認識を改めて示したものなのだが、過去の頼総統の発言や蔡前総統の演説にもあった。民進党政権としてはあえて独立に向けて動く必要はないとすることで独立をめぐる議論が争点化するのを避ける意図があったとみられる。また最近の台湾の世論調査では7割を超える人たちが中国と台湾を2つの異なる国と捉えていることもあり、頼総統としてはこうした世論を意識した可能性もある。ただそれにしても中国の反発というのは収まらないよう。習近平政権もある程度織り込み済みだったとは思うが、それでも国内に向けて弱腰の姿勢を見せるわけにはいかない。早速23日からの2日間台湾を取り囲むような形で軍事演習を行うとした。頼総統は就任早々、台中関係においては難しい局面を迎えた形で中国がどこまで行動をエスカレートさせるのか、しばらく目が離せない状況が続きそう。