先月行われた将棋の叡王戦。挑戦者の伊藤匠さんが藤井聡太さんの八冠独占を崩して初めてのタイトルを手にした。この同い年の2人、初対局は小学3年生のときだった。このときは伊藤さんが勝って、負けた藤井さんは号泣したそう。今回、新叡王となった伊藤さん。その素顔に迫る。初タイトル獲得直後の会見で「藤井さんがいなかったらタイトルも取れなかった」と語った伊藤匠新叡王。子どものころからプロ棋士になることだけを目指してきた。15歳のとき、すでにプロ棋士だった藤井さんと羽生善治さんとの対局で記録係を務めた。同じ年の藤井さんが活躍する姿に憧れる一方で悔しさも感じていた。伊藤さんも17歳の若さでプロ棋士としてデビュー。年度最高勝率や新人王獲得など実績を重ね、デビューから僅か3年で竜王戦、棋王戦で藤井さんへの挑戦権を手にした。しかし、どちらのタイトル戦でも1局も勝てずに敗退。ほかの対局も合わせると11連敗を喫したが、藤井さんとの戦いが自分を成長させたという。そして臨んだ今回の叡王戦。第2局、第3局と伊藤さんが連勝し、勝負は最終局までもつれ込んだ。その最終局では、じっと持ちこたえる我慢の将棋で藤井さんのミスを誘い、念願のタイトルをつかみ取った。タイトルを獲得した直後から日課の練習将棋を再開し、将棋漬けの毎日を送る伊藤さんが唯一の息抜きは野球観戦だそう。21歳でタイトルを獲得した伊藤さん。将棋界に新たな時代を築こうとしている。