石川雲蝶が赤城山 西福寺の天井に天井彫刻を彫ることになった理由はこの雪深い土地の心の拠り所になるお堂を建てたいと願った。その願いに感銘をうけた雲蝶は、自らの彫刻で空間を埋め尽くした。その芸術の根幹となる技が透かし彫り。板に彫刻を施し、向こう側が透けるほど彫り込む技法のこと。開山堂内の天井彫刻を始め、その殆どが透かし彫りの作品で、社寺彫刻の横谷さんが驚いたのは道元禅師と白山大権現。日本に帰国が迫る道元の写経を老人に姿を変えた白山大権現が手伝っているという場面。その背後の補綴や小さな香炉など奥の奥まで彫られている。欄間は25センチの厚さのある材僕木を使って透かし彫りで彫られているが欄間は下から見上げることを想定して作られるので角度をつけて彫られていく。その彫り方を真横からみると、白からの目線にあわせて斜めに傾いた角度で彫られている。雲蝶は下から見る角度を計算し見るものの目の錯覚を利用して彫っていた。